Excelで管理してきた業務を、Webアプリに置き換える。いわゆる脱Excelです。
こんな状態になっていませんか。

私はいま、Excelで回してきた業務をWebアプリに置き換える仕事を進めています。
置き換えたシステムは、きちんと動きました。それでも、現場が使ってくれず、運用は前に進みませんでした。返ってきた声は「現場の意見を聞いていない」です。
現在は意見を聞き直し、アプリを作り直しています。

この記事では、その現場で整理した「誰が何を決め、何を現場に聞くか」の分担と、古いやり方を終わらせる手順をまとめます。

この記事の要点

  1. 「変えるかどうか」は上の立場が決める。「どう変えるか」は現場に必ず聞く。この二つを分けると、強く進めることと意見を聞くことが両立する
  2. 古いやり方には終わる日を決める。終わりのない並行運用は、二重管理を増やすだけ
  3. 例外の判断を、導入を任された担当者(推進役)に背負わせない

システムは動くのに使われない3つの理由

使われない理由は、たいていシステムの出来ではありません。次の3つが重なっています。

理由 現場で起きること 見落としやすい点
慣れた手順を失う 定常業務の人ほど「いつものやり方」に戻る 怠けているのではない。間違えずに回すこと自体が、その人の仕事の価値
意見を聞かれていない 「聞いていない」が反対の理由になる 中身への反対ではなく、手続きへの反対であることが多い
古いやり方が残っている Excel・メールとの二重管理が続く 並行運用に終わる日がないと、古いほうが楽なまま

1つ目は、気持ちの問題に見えて、実は仕事の価値の問題です。
毎日同じ手順で、間違えずに終わらせる。定常業務を回す人は、それで評価されてきました。やり方が変われば、その積み上げが一度ゼロに戻ります。嫌がるのは自然な反応です。

2つ目と3つ目は、進め方で防げます。

決めることと、現場に聞くことの分担表

強く進めるべきか、現場の意見を聞くべきか。この二択で迷うと、どちらも中途半端になります。
聞く中身を分けると、両方できます。

項目 決める人 現場に聞くか
置き換えるかどうか 上の立場 聞かない(理由は説明する)
古いやり方をいつ終えるか 上の立場 聞かない(準備の期間は相談してよい)
例外を認めるか 上の立場 状況は聞く。判断は上がする
画面の項目の並び・入力の順番 現場の声で作る 必ず聞く
毎日の手間(貼り付け・取り込み・確認の回数) 現場の声で作る 必ず聞く
呼び方・表示の言葉 現場の声で作る 必ず聞く

「置き換えるかどうか」を現場に聞くと、定常業務を回す人ほど「変えないで」と答えます。それは当然の答えです。
一方で、「どう変えるか」を聞かずに作ると、毎日使う人の手順に合わない画面ができます。私の現場で作り直しになったのは、この部分でした。

聞くときのコツ

推進役を守るために、上の立場が引き受けること

導入を任された担当者(推進役)は、使い方を説明し、反発を受け、例外の相談に乗ります。
それなのに、「この例外を認めるか」「古いやり方をいつやめるか」を決める権限は持っていないことがほとんどです。

決められない立場で、反発だけを受け続ける。ここで推進役が潰れると、置き換えは止まります。
上の立場が引き受けることを、チェックリストにしました。

特に3つ目は、一言で効きます。
「例外の判断はしなくていい。迷ったら上に回して」。これを最初に伝えておくだけで、推進役は反発を一人で受け止めずに済みます。

古いやり方を終わらせる手順

並行して使える期間は必要です。ただし、終わる日を決めない並行運用は、いつまでも終わりません。

手順 やること
1. 終わる日を決める 「この日以降、Excelへの記入は記録として扱わない」と日付で決める
2. 前もって知らせる 終わる日と理由を、関係者全員に文章で伝える
3. 古い入口を閉じる 終わる日が来たら、古いExcelは読み取り専用にする。メールでの受付は、新しい入口への案内に切り替える
4. 残っていないか確かめる 終わった後も古いやり方で届いていないかを、数日おきに確かめる

4つ目を省くと、古い入口からの依頼がひっそり続きます。
周知したはずの変更が終わらない理由と確かめ方は、周知したのに、古い様式で届く──「変えた」を本当に終わらせる3つの確かめ方にまとめています。

「Excelでないと使いづらい」と言われたときの選び方

外部の協力者など、社内の画面に慣れてもらいにくい相手から、この声が出ることがあります。
選べる道は主に3つです。どれを選ぶかは、推進役ではなく上が決めます。

選択肢 向く場面 気をつける点
新しい画面に慣れてもらう 入力の量が多く、毎日使う相手 最初の説明と、困ったときの問い合わせ先が要る
Excelの形で受け取り、取り込むときに決まりを確かめる 相手側の事情でExcelをやめられない 取り込む仕組みが要る。確かめずに取り込むと、Excelの誤りがそのまま入る
当面は例外として、受け取った人が入力する 件数が少ない・期間が限られる 転記の手間と誤りが残る。例外の終わる日も決める

2つ目は、相手の使い慣れた形を残しつつ、入口で決まりを守らせる方法です。
相手に合わせることと、入ってくるデータを守ることは、取り込みの時点で両立できます。

それでも、新しいやり方に合わない人はいる

ここまでやっても、合わない人はいます。

そのときに、合わない人に合わせて運用を止めることはしません。
世の中のやり方は変わり続けます。運用をそれに合わせて変えるのは、管理する側の仕事です。
その結果として、担当が変わったり、人が入れ替わったりすることもあります。正直に言えば、それは仕方がないと考えています。

ただ、それは最初から人を切るという話ではありません。
「どう変えるか」をきちんと聞き、終わる日と例外の線を示したうえで、それでも合わなかったときの話です。

よくある質問

Q:現場の意見を聞くと、結局「変えないで」になりませんか?
A:「変えるかどうか」を聞くと、そうなりがちです。聞くのは「どう変えるか」に絞ります。「毎日いちばん手間がかかる操作はどれか」と、手順を具体的に聞きます。

Q:並行運用の期間はどれくらいがよいですか?
A:業務によって違うので、決まった長さはありません。大事なのは、長さより「終わる日を最初に決めて伝える」ことです。

Q:推進役に任せきりにしてはいけませんか?
A:使い方の説明や要望の聞き取りは、推進役の大事な仕事です。任せてはいけないのは、例外の判断と、古いやり方をやめる決定です。決める権限がないまま反発を受け続けると、推進役が疲れ切ってしまいます。

Q:外部の協力者がExcelをやめられない場合は?
A:Excelの形で受け取り、取り込む時点で決まりを確かめる方法があります。相手の使い慣れた形を残しながら、入ってくるデータを守れます。

まとめ:脱Excelで止まるのは、運用の変え方

脱Excelで止まるのは、たいていシステムではなく、運用の変え方です。
「変えるか」は上が決める。「どう変えるか」は現場に聞く。古いやり方には終わる日を決める。そして、推進役に判断を背負わせない。

置き換えの進め方の整理や、Excelから取り込む入口づくりのご相談を承っています。
業務の流れを整理して「何を作るか」を決めるところ(要件定義)から、運用後の保守まで対応します。やり取りはすべて文章で進めます。

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